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GEMSIS-電離圏 (Ionosphere)

大規模沿磁力線電流分布モデルの開発

大規模沿磁力線電流分布の経験モデルの開発

演繹的なアプローチによる宇宙天気図の構築には沿磁力線電流のモデルが欠かせません。統計数理研究所とジョンズホプキンス大学応用物理研究所と共同で、DMSP、DE-2、FAST 衛星が長期観測した数10万点の磁場データを最新の統計学的手法を用いて解析し、大規模沿磁力線電流の統計的有意性の高い経験モデルを開発しました。より現実的な沿磁力線電流分布を得るため、太陽風速度、惑星間空間磁場、磁軸の傾き、太陽活動度などのパラメータを用いて分類しています。観測データをそのまま平均すると極性の異なる沿磁力線電流が互いに打ち消しあうため、沿磁力線電流分布は低めに見積もられてしまいます。このような効果を防ぎ、沿磁力線電流層の境界が明瞭かつ電流量を適切に表現するため、電流層の上限下限緯度を独立に抽出するという工夫がなされています。得られた結果は、国内の学会等で発表されました。

DMSPとDE 2衛星が観測した磁場データを用いて構築した大規模沿磁力線電流モデルです。沿磁力線電流の境界が明瞭に定義されているのが特徴です。図は、惑星間空間磁場が南向きに相当する場合の沿磁力線電流分布の一例で、青色が地球向きの電流、赤色が地球から出る方向の電流を示しています。


地磁気逆計算法によるオーロラ電流系の推定と検証

極域電離圏 (高度100 km) におけるオーロラは、より高々度の磁気圏と、磁力線に沿った電流を通じて結合しています。この電流 (沿磁力線電流) は、2つの異なる手法を用いて別々に研究されてきました。一つは極軌道の衛星による直接観測であり、電流分布が単純な場合は、ほぼ正しい電流値が定まります。ただし、観測は軌道線上に限られるため、面での電流分布については、統計値しか得られません。もう一つは地上の磁場データを用いた地磁気逆計算法であり、間接的ではあるが、面でのスナップショットの推定が可能です。本研究では、地磁気逆計算法によって推定した沿磁力線電流と、直接観測を比較しました。その結果、沿磁力線電流が比較的単純な二層構造であった二例では、地磁気逆計算法はこの構造を定性的に再現し、定量的には30-60%過小評価しました。一方、沿磁力線電流が複雑な四層的構造であった一例では、地磁気逆計算法は、内部の二層を定性的にも再現できませんでした。