EnglishGEMSIS-太陽 (Sun)
研究概要
太陽フレア（以下、フレア）とは、太陽大気中での突発的なエネルギー解放現象であり、太陽系最大規模の爆発現象です。フレアが発生すると、大量のコロナプラズマが加熱・加速され、惑星間空間に放出されます。
フレアを研究する意義はいくつかありますが、その一つとして、人間社会に与える影響があります。フレアで発生した高エネルギー粒子が地球方向に飛来すると、宇宙飛行士の被曝や人工衛星障害といった甚大な被害をもたらす可能性があります。実際、過去には巨大太陽フレアが大規模な磁気嵐やオーロラの原因となり、送電線に過剰な電流が流れ大停電を引き起こしたり、科学衛星が制御不能に陥った事例がありました。
また、諸天体の観測から、フレアと同様の爆発現象が、磁場を持つ太陽以外の恒星・天体（降着円盤など）においても発生している事が知られています。太陽は地球近傍に存在するため、他の天体と異なり、太陽で発生した現象は空間的に分解され、詳細に研究することができます。太陽フレアの詳細な研究により、諸天体に共通した物理過程の解明が期待されます。
太陽フレアの研究は、地上・衛星観測から得られたデータの解析、および数値計算を駆使した理論的な研究により、大きな進歩を遂げてきました。特に、そのエネルギー解放過程が磁気リコネクションであるという発見は、フレア研究の一里塚となりました。しかしながら、フレアの発生から地球に与える影響を詳しく理解するために、いくつかの未解決問題があります。フレアはいつ発生するのか、発生前にどの程度のエネルギーが蓄えられているのか、そしてどの程度解放されるのか、フレアに伴う高エネルギー粒子加速はどのように起こるのか、などです。例えば、フレアが発生すると、数十 keV - 数十 MeV の電子や、数十 MeV - 1 GeV のイオンといった高エネルギー粒子が生成されます。これらの高エネルギー粒子加速は、地球近傍でも発生していますが、その共通した加速機構は未解決の問題です。
以上の観点から、太陽フレアは、宇宙と共に生き、今後、ますます宇宙に進出していくであろう人類にとって、急務に取り組むべき重要な問題です。また、この問題意識の根幹は我々全GEMSISグループメンバーに共通するものです。 GEMSIS-Sunグループでは、GEMSIS phase-IIにおいて、太陽フレアのエネルギー蓄積過程、トリガー機構、エネルギー解放過程、粒子加速過程を統一的に理解することを目標に掲げています。それを実現するために現実的なモデルを構築し、観測結果(特に大フレア)と比較を行うことで、研究を推進します。