サブストームは、磁気圏尾部に蓄積されたエネルギーが解放される現象です。 サブストームが発生すると、たとえば、夜側の極域で激しいオーロラ活動が見られます。 サブストームが磁気圏尾部のどのような物理現象によって引き起こされるかは、 磁気圏物理学における未解決の大問題の一つであり、何十年もの間、激しい論争になっています。この問題の解決に向けて、サブストーム開始前後の磁気圏尾部のダイナミクスについて調べています。
プラズマシートにおける磁場双極子化に伴う圧力変化に着目し、Geotail衛星のデータを用いた統計解析と事例解析を行いました。その結果、これまでに言われていた結果と違い、イオン圧力は、磁場双極子化が最初に起こる領域では、磁場双極子化に伴い増加することがわかりました。サブストーム開始機構について、いくつかの有力なモデルが提唱されていますが、そのうちの一つのカレントディスラプションモデルは、尾部方向に伝播する希薄波が、磁場双極子化に伴って発生し、近尾部の磁気リコネクションを引き起こすというシナリオを提唱しています。しかし、本研究の観測結果により、この希薄波モデルは否定されることが結論づけられます。
参考文献: Miyashita et al., JGR, 2010
これまでの私たちの研究 [Miyashita et al., 2009] により、サブストーム開始に伴うエネルギー解放は、磁気リコネクション領域と磁場双極子化開始領域の間の領域で顕著であることが明らかになった。そこで本研究では、中間領域で解放されたエネルギーがどこへどのような形態で輸送され、消費されるかを調べるために、Geotail衛星のデータを用いた統計解析を行った。その結果、中間領域で解放される大量のエネルギーのうち、一部だけが主に高速流の熱フラックスや波動のポインティングフラックスとして磁場双極子化開始領域に運ばれることがわかった。また、尾部側から高速流によって運ばれるエネルギーだけでは、磁場双極子化に伴うエネルギー増加・輸送に足りず、ローブからのポインティングフラックスが重要であることがわかった。これらの結果は、磁気リコネクションと磁場双極子化の物理過程や因果関係を考える上で重要な結果である。