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GEMSIS-磁気圏 (Magnetosphere)

放射線帯ダイナミクスと電子加速の研究

地球放射線帯外帯は、太陽活動によってその空間構造が変化します。具体的には、太陽活動の極大付近で地球側に接近し、太陽活動の下降期で地球から遠ざかります。このような太陽風と放射線帯の相互作用について、大規模データベースを活用して以下のような研究を行っています。これらのデータ解析から得られた知見は、GEMSIS-放射線帯モデルの中の各種物理モジュールの開発にも活かされています。

  • THEMIS衛星の高エネルギー粒子観測器のデータを用いて、放射線帯外帯外側境界のL 値方向への移動を解析し、惑星間空間への相対論的電子の逃走過程 (Magnetopause Shadowing: MPS) が外帯の消失に与える影響を調べました。2007 年から 2008 年までの外帯消失イベントを解析した結果、外帯の消失イベントの多くは太陽風動圧が高いときに起こること、また外帯の境界位置の変動と磁気圏界面の変化には有意な相関が見られることがわかりました。また、太陽風動圧に対する外帯境界位置の変化は、GEMSIS-RBシミュレーションの結果とよく一致しました。次に、MPS後の外帯境界位置の変化から予想される拡散係数を推定したところ、「MPS後に外向き拡散が起こり、磁気圏界面から遠いところでも外帯の消失を引き起こす」というシナリオと調和的であることが示されました。
  • 参考文献: Matsumura et al., JGR, 2011

  • 放射線帯外帯の太陽風構造依存性について、各太陽風構造の太陽活動周期での発生頻度に注目して解析を行いました。放射線帯外帯は、SIR後のコロナホールからの高速太陽風通過時には、静止軌道を含む外帯の外側で大きく増加します。一方で、CME が引き起こす規模の大きい磁気嵐時には内側で増加します。また、コロナホール流およびCME性磁気嵐の発生頻度を調べると、太陽活動下降期にはコロナホール流が頻繁に地球に到来し磁気嵐を引き起こしますが、太陽活動極大付近ではCMEに伴う磁気嵐の頻度が高くなります。これらの解析結果から、外帯の空間構造の変化は太陽活動周期での太陽風構造変化によって作り出されているとするモデルを新たに提案しました。


  • 参考文献: Miyoshi and Kataoka, JASTP, 2011