データ同化によるジオスペースの研究

データ同化によるジオスペースの研究

  近年、観測データとコンピュータシミュレーションを融合させたデータ同化と呼ばれる手法が急速に発達しています。人工衛星による観測は、広大なジオスペースのある一部分のみですので、観測データのみでジオスペースの全体像を把握することは困難です。一方、シミュレーションは広い空間領域にわたって計算することが可能な一方、シミュレーションに用いられているパラメータや境界条件等には、ある不確定性が常につきまとっています。このような問題点を改善するために、シミュレーションと観測データを統合し、実際の観測データをうまく説明できるようなパラメータを見つけ出し、高精度な計算を実現することが、データ同化です。
  データ同化にはいくつかの異なる方法がありますが、現在私たちは「粒子フィルター」と呼ばれる逐次型のデータ同化の手法を用いて、「放射線帯」のデータ同化研究を進めています。データ同化を行うことによって、シミュレーションの支配方程式で使われている各種パラメータを改善し、より高精度なシミュレーションを実現することを目的としています。また、データ同化から推定されたパラメータと、そのパラメータと密接に関係すると思われる観測量を比較することにより、放射線帯の物理機構の研究も進めています。
  データ同化によってシミュレーションのパラメータを改善・改良することで、高精度な予測数値計算も可能にするものです。私たちは、データ同化を通してシミュレーションの改良を行いながら、高精度予測計算を実現し、数値宇宙天気予報の精度向上に貢献していきたいと考えています。

放射線帯シミュレーションのデータ同化の例

内部磁気圏探査衛星 ERG (2015年 12月打ち上げ予定)